OLD DIESEL 3 / Double-Acting Cylinders

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Double Acting ?

Double Acting Cylinder、和訳は複動式シリンダ、なんだか聞きなれない言葉ですね。今現在はSingle Acting Cylinder、単動式機式シリンダが圧倒的に多く、改めて単動式2サイクルディーゼル機関と記載することはあまりありません。 ただし、造船所の建造仕様書の主機関仕様には今も以下のような記載があります。
“One (1) Set of “機種名”, two cycle, single acting, cross head, electronically controlled marine diesel engine equipped with exhaust gas turbo-charger”

複動式機関が第一線で活躍していた時期は、戦前になります。
しかし戦時中に機関の信頼性や、複動式構造が複雑ゆえに、単動式にとってかわられました。

では、なぜ複動式機関が開発されたかというと、黎明期のディーゼルエンジンは材料強度や高性能大型過給機が存在しなかった等の背景により、シリンダ内の爆発 / 膨張圧力を増して馬力を増大することができず、また大型商船の主機関では、回転数を上げて馬力を増大すると、大型プロペラは低速で回す必要があるので、大型減速機が必要になる等問題があり、複動式機関が開発されたと推測しています。
(もし、文献等ありましたらご教授ください)

ディーゼル機関の馬力

まずは、ディーゼルエンジンの馬力算出の解説です。
内燃機関の図示馬力の計算式は以下の通りです。
図示馬力(IHP / Pi)とは、シリンダ内の噴射燃料の爆発 / 膨張で発生した仕事量を表します。

機関の軸端 (フライホイール)での馬力は、ディーゼル機関の場合は制動馬力(BHP)と言います。図示馬力と制動馬力の関係は、今回の解説で必要ないので、割愛します。

余談ですが、学生時、上記式とパラメーターの順序と頭文字が違う式で、”ぺらんき”の式とおぼえていました(笑)命名者は同級生で今現在は、エネゴリ君系の船会社で働いています。

  1. 平均有効圧力 : Pmi
    平均有効圧力はシリンダ内の爆発膨張時にピストンを押し下げる力と思ってください。今現在の機関は約1.8Mpa程度、戦前の機関は0.8Mpa程度と大きな差があります。計算では、平均有効圧力だけで、今現在は戦前に比べ2.25倍の出力になっていますね。
  2. Fixed Number / 定数 : i
    この定数が今回のお話の”ミソ”です。
    4サイクル単動エンジン : 1/2
    2サイクル単動エンジン : 1
    2サイクル複動エンジン : 2

    ということは、定数(i)で複動エンジンは2となるので、他パラメーターが同一の2サイクル単動エンジンの2倍の馬力となることがわかります。詳しい説明は後ほど。
    (定数を2とするには、前提条件として、複動式機関のピストン上下で発生する仕事量が同一である必要がありますので、厳密には2にはならないと思います。今回は複動式機関を簡単に理解するために、2としました )
  3. A, S, n,k
    各数字は以下の通りです。特に難しい数字はありません。
    A : ピストン面積
    S : ピストンストローク : 今現在も長工程化が進んでいる
    n : 回転数
    k : シリンダ数

B&W2000

挿絵は、コペンハーゲンのDiesel Houseで頂戴した絵になります。やっぱり手書きのエンジンカッコいいですね。

よく絵を見ていただくと、なぜかピストンの下部で爆発していますね。すなわち複動 とはピストンの上下で爆発 / 膨張をすることを差し、馬力の式で係数 “i”が2になっている理由になります。
爆発回数、すなわち燃料噴射回数を増やして、馬力を稼いでいました。

紹介した複動式2サイクル大型機関ですが、動態保存されています。
1933年に建造され、現在は上述のDiesel House(博物館)で動態保存展示されております。下に運転時の動画掲載いたします。

B&W2000ですが、1960年代の後半まで発電機用機関として運転されていました。ディーゼルエンジンの起動性、停止性を生かして、朝や夕方の電力需要がひっ迫する時間帯に運転されていました。

今回は、今は姿を消した複動式ディーゼル機関に関して、振り返ってみました。
最新機関の説明もしてみたいですが、著作フリーの素材が無く、結構ハードルが高いです。最近のディーゼルエンジンに関しては、香川県 / 高松市の株式会社マキタさんの企業ページが非常にわかりやすく記載されていますので、興味のある方はリンクを押してみてください。

そして今現在私が担当している舶用大型2サイクル2元燃料機関(LGIM / LGIP)は、一応最先端の舶用機関なので、情報を載せたら、まずいですね・・・・
(ゴルゴ13に消されるかもしれません > 冗談です)

海外には今回紹介した、コペンハーゲンのDiesel Houseの他、様々な都市に、Maritime Museumがあります。芸術性は?ですが、お時間があれば、是非訪れてみてはいかがでしょうか?
東京にも”船の科学館”が有明にありますが、現在は閉館中。いつの日か復活してほしいですね。

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